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2026.03.09

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春を追いかけた

NATSU

NATSU

高校二年生のときに卒業式があることを忘れて学校に行ってしまったことがある。

わたしの高校時代はコロナ禍だったから、卒業生とその関係者以外は学校に入れないみたいだった。
そのクラスLINEを見たのは高校の最寄りに辿り着きそうな時だった。

当時わたしはいまの事務所とは違う事務所でアイドルの研究生をしていた。

学校生活、いわゆる青春というものに対して憧れがあって、青春を追いかけるように全日制の高校を選んだが、友達はあまりできず、一緒に過ごしてくれる人が居たとしても自分はアイドルじゃなくて、アイドルの研究生だし、デビューもしていないしなと、どこか後ろめたくて、上辺だけの学校生活になっていた。

結局、高校で青春なんてできなかった。

その時期は高校二年生から高校三年生に上がる年でもあり、将来に対しても漠然とした不安があって、なんとなく研究生から正規のアイドルへ昇格できないんだろうなとどこか悟っていた。
それでも諦めないと言い続けることが応援してくれるファンの方への誠意だと思っていた。その偽善めいた心が身体に少なからず影響した時もあった。

なんとなく重い身体と心を背負ったまま電車を終点まで乗り過ごした。

辿り着いた場所は逗子・葉山駅。

正午を過ぎる前くらいの時間、駅を降りた瞬間の春の暖かさがやさしくて、涙が出た。この涙が海に還ったらいいな、と思い立ちわたしは海に向かった。

海に向かった時になにを思っていたかな、制服のまま歩いていたから海風が吹くたびに足が寒かった。少し身長を盛ったローファーで歩いてたからか踵も痛かった。

歩道が五百メートル進んだところで行き止まりだった。

行き止まりに辿り着いたらいっそぜんぶ終わりにしてしまおうか。

なんて思ったけれど、制服のジャケットに少し潰れたおにぎりが入っていたことを急に思い出した。

母が朝ごはんにおにぎりを作ってくれたことを思い出して、わたしはそのポケットに入っていた少し潰れたおにぎりを取り出して、食べた。

食べている時、誰かが前を横切った気がしてわたしはそれを追いかけた。

遠くから見て白い服を着た長い髪の女の人だった。こんな昼間になんで?と思ったのかな、幼さゆえの好奇心かはわからないけれど妙に惹きつけられて追いかけた。

距離はどんどん近くなったはずだった。五十メートル、三十メートル、十メートルと近くなっていった。
ある地点で彼女は階段を降りた。
わたしはそれを見失わないようにと走って追いかけた。しかし階段を覗き込むと、
追いかけていた女性の姿は一ミリも見えなかった。

彼女が降りていたはずの階段の角度は急過ぎて、手すりもなく、こんな階段急いで降りたら絶対に落っこちると思う。それくらい降りにくい階段だった。
そしてその階段の先には、なにもなかった。地面の断面、海に続く足場の悪い岩だけがあった。

わたしが追いかけていたものってなんだったんだろう?

あの女の人は結局、幽霊だったのか、今でもわからないでいる。
わたしはその出来事に何故か異様に恐怖を感じて、死ぬのが怖くなった。もちろん生きるのも怖いけれど、やっぱり死ぬのはもっと怖いって思った。

その後わたしはなんとか抜け道を歩いた。

抜け道を歩くと青々とした木々が広がっていた。

この看板を見て思い出した。

わたしが最初に追いかけていたもの、
それは欅坂46さんだった。

「SUMMER SONIC 2017」幕張メッセで見た欅坂46さん、それがわたしの一番最初に追いかけたもの。

バス停を見つけて、駅に辿り着くまでの間にイヤホンを耳に入れて『二人セゾン』を聴いた。

『春夏秋冬 生まれ変われると
別れ際 君に教えられた』

生まれ変われるのかな、ってなんとなく何処か希望を感じた。

それからわたしは研究生としての終わりや色々なものに葛藤を感じながら、過ごしていたと思う。曖昧な記憶ではあるが、生きるのに必死だった。

今いる場所が自分に合っているかはわからなかった。でも間違いなく、わたしが一番大切にしたいと思うもの、わたしを追いかけてくれていたひと、それは応援してくれるファンの皆さんだった。それが全てだなと思いながら活動していた。最後の数ヶ月は自分のファンのために活動していた。
研究生としての活動が終わっても、ファンを忘れたことは一度もなかった。

きっと他に輝ける場所が絶対にあるはず、絶対に探してやるって思いながら血眼にアイドルオーディションを探した。アイドルになる以外にも正直いろんな選択肢があったと思う。
追いかけて追いかけて追いかけた。

そして辿り着いた場所がここだった。

きっとこの先もわたしは色んなものを追いかけるんだと思う。夢を追いかけたり、なりたい自分を追いかけたり、辿り着きたい場所も、自分も、たくさんある。

その辿り着きたい場所を目指して、今応援してくれている人、これから出会う人のこと、今そばにいてくれてる人のことも大切にしながら歩んでいきたい。お互い支えあえたら嬉しいなと思っている。今はまだ外を歩いていても寒いかもしれないけれど、きっとみんなと一緒なら温め合える。そう信じている。

それが、夏に辿り着くまでのわたしの春です。

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